Skip to content

「迷走王ボーダー」狩撫麻礼、たなか亜希夫

このマンガは読もうと思って読んだのではなくて、どっかの喫茶店かなにかで手に取った「漫画アクション」に載ってたのをたまたま読んだのかな。

連載開始が1986年だそうで、ちょうど高校1年の時か。

携帯電話もEメールもない時代。
「なんとなくクリスタル」なイメージ重視の世を
イメージの「中身」を探して生きる男3人の物語。
主人公の蜂須賀は色んな紆余曲折を経て
たどり着いたのは便所部屋(家賃3000円)のハード貧乏生活。
そのアパートの住人2人と共に繰り広げるてんやわんやのストーリー。

まだ社会に船出する前の子供にとって衝撃的だったなあ(笑)
確か、初めて読んだ時は主人公の蜂須賀がブルーハーツを初めて聴いて衝撃を受ける場面だった。
歌詞が一面にバーーっと書かれててすごいインパクトだったのを覚えてる。
当時はバンド少年だったオイラですから食い入る様に見ちゃうわけで。

その後、主人公の蜂須賀は紆余曲折の後に、ウェイラーズをバックに東京ドームでコンサートをやるんですが、この当時「レゲエ」なんて言葉もボブ・マーリィなんて人ももちろん知らない。

蜂須賀は漫画でボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズの名盤「ライブ!」を曲順そのままで演奏します。
もちろんその後、このアルバムを聴くことになるんですが
この漫画を読んでなければ、決して聴くことはなかったかもしれません。

そして、26ぐらいの時に急にこの漫画を思いだしたんだけども
どこに行っても売ってない。
ちょうど配送の仕事をしてた時期だったから、走ってる途中で古本屋を見つけては探すという事を繰り返してようやく全巻そろえた思い出があります。

この漫画は本当に浮かれてたあの80年代を強烈に風刺してるように感じます。
確かにあの時代に高校生だったオイラはなんの不安もなく過ごしてたけど
「あれ、なんか違うな?」という違和感と社会に出る前の不安感が
この漫画の底辺にあるテーマとシンクロしたのでしょう。

今改めて読み返してみると、確かに古いと感じる部分もあるし
「そういえば昔オレもワルだったんだー」な
オヤジノスタルジック的な部分もある(笑)
でも、蜂須賀が口にする「無為こそ過激」というのは、
いつの社会も同じでしょうね。
食っていく方がただ生きることよりキツイ世の中で
なにもしない事は確かに一番過激だと思う。

でもね。
この現代でこの漫画をそのまま鵜呑みして
「あちら側」「こちら側」言うてるのが
実は一番ダメな気がするんだわね。
お前、それただ単に逃げてるだけちゃうんか、と。
この漫画を死ぬほど愛してる人と話すと
この部分がいつもズレてめんどくせぇんです。

主人公の蜂須賀は
一度「あちら側」で成功して「こちら側」に来た人。
だからこそ言えるこのカテゴリー分けであって、
「あちら側」で何の実績も残してない人が
こういうこと言うてもダメなんです。
説得力が全然ない。
「尾崎が歌ってたから窓ガラス割りました。」
言うてた人達と何も変わらんのです。

この漫画は自分にとって
「あの時の初心を取り戻す為の最良のサプリメント」なんです。
何ヘタってんだオレ、しっかりせえよ!
という時に摂取する「心のサプリメント」w

今は新刊として再発されてます。全8巻です。

色んな意味で「自由を探し続ける人」にはオススメです。


Published inマンガ

Comments are closed.