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「夜光虫」馳星周

「不夜城」「鎮魂歌」に続く、馳星周氏の3作目がこの「夜光虫」。

舞台は前2作の新宿じゃなく、今回は台湾です。
前2作は続き物でしたが、これはまた別の物語。
台湾は行ったことはないのですが
文体から「蒸し暑さ」が伝わってきます。
文中に出てくる檳榔(びんろう)という
「低所得者の嗜好品」にものっそ惹かれます(笑)
自分もかみ砕いてぺーって赤い唾液吐き出してみたい!
今やれば罰金刑らしいですが。

主人公は日本のプロ野球界を追われた投手、加倉。
日本で借金を作り、台湾プロ野球界に来たものの
台湾プロ野球界のほとんどが八百長に手を染めており
加倉も借金返済の為に八百長に手を染める。

うまくやっていたんだが、ある日黒星(ヘイシン。マフィアの事)に
さらわれて、「次は負けろ」と言われる。
一緒にさらわれた加倉の弟分、俊郎はマジメな性格で
警察にかけこもうとするが、それをやられてしまうと自分はおろか
台湾野球界の崩壊を招き、借金も返せなくなるので必死に止めるが
全てを俊郎に知られてしまい、加倉は俊郎を殺してしまう。

そして、ここからはお馴染みのジェットコースターの様に崩れ落ちる人生。
主人公も悪いが、周りもみんな悪い。
騙しダマされ、裏をかいたりかかれたり。
文体からにじみ出る蒸し暑さと共に、
暗黒の世界はすごいスピードで描かれます。

馳作品にはめずらしく、ヒロインの女性が善人ですw(俊郎の嫁さん)。

ラストシーン。
加倉は全てを失い、顔も替えて再びヒロインの前に他人として対峙します。
最後、去り際にヒロインの家のゴミ箱から拾った指輪をそっと手渡して
去ろうとしますが、ここのシーンが非常に美しい描写です。

全員死んだ。意識飛んだ。じゃなくてまるで恋愛映画のラストの様。

この人の小説はやっぱこのスピード感ですねえ。
どいつもこいつも主人公はみんな悪人ってのもめずらしいですが
「悪人に感情移入できるかできないか」で好みがすっぱり分かれるかと。

まあ、基本的に自分も善人ではないですから・・・・
この人の小説が好きなのかも知れませんね。

おもしろかったです。


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