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「あさま山荘1972(上)」坂口弘

あさま山荘事件当時というのは僕はまだ1歳にも満たない幼児でした。なので何一つ記憶には残っていない事件なのですが、大人になって自分が若い頃を思い出した時にふと「一世代前の若者ってどんな事を考えていたんだろう」という単純な興味がわいたのです。

よく聞く「団塊の世代」という言葉、「60年安保」「70年安保」それらのキーワードについて色々調べていく内に、これらのクライマックスとして「あさま山荘事件」がクローズアップされてきました。

犯人は20代、そして高校生までいたというこの事件。
まず最初は警察側の視点で書かれた佐々淳行氏著「連合赤軍「あさま山荘」事件 」(当サイトレビューはこちら)を読んだのですが
これには犯人側の視線が皆目で、もはや犯人としての記号でしかなかったので
当初の目的だった「犯人側の思考」が全然読み取れなかったのですね。
(事件のおおまかな概要、そして警察側でも色々あるという事はわかった)

そこで見つけたのがこの本。
犯人の一人である坂口弘氏(2011年8月現在も死刑囚として服役中)
が書いた3冊の本です。
もちろん、本人も思い出しながら書いてるので
全部を信用するわけじゃないですが
どういった事を考えていたか、は読みとれると思ったんですね。

僕は事件そのものにも興味がありますが
それよりも興味があるのは「いかにして犯人はそれをするに至ったか」という
思考そのものなのです。
だからこの本は僕にとってうってつけでした。

最初は坂口氏が所属してた革命左派が起こした羽田空港突入事件が
いかにして決まって決行されたか、から物語は始まります。

アパートという単語、そして畳の匂いが香ってきそうな風景。
その中でまるでサークル活動のようにあつまる若者達。

これは、僕の原風景と大して変わりないのですが
話されてる内容がバンドや女、ギターの事ではなく
一人のカリスマ的なリーダーの元に集まって、いかにして羽田空港に突入して
愛知外相(当時)が乗っている飛行機を止めるか、という事。
当時、ただのメンバーに過ぎない坂口氏の視点で淡々と語られる事実に
僕自身はなんともいえないズレを感じて読んでいたものです。

たまに機関誌、という発行物の内容とか思想が語られますが
正直、僕が若者だった時、こんな事考えてはいなかった。
少なくとも僕の周りでは。
(もしかしたら同年代でもこういう人はいたのかもしれないけれど)
そのひたむきさの後ろにある悲壮感が痛々しすぎる。

この本は統一赤軍結成、
そして同志を殺して印旛沼に殺して埋めるところまで
描かれますが、その描写がとても生々しくて
読むのになかなかエネルギーが必要になります。

途中の思想部分を読み飛ばしたとしても
概要部分を拾っていくだけで十分な読み応えがあります。
著者はそういう読み方をされるのは望んでないかもしれませんが。

70年代頭、すべての学生運動の衰退の原因となるこの事件を
犯人側の視点で知るのは最適の著書といえます。

もちろん人を殺すことに僕自身共感してるわけではないことを
ここで書き記しておきます。


Published inノンフィクション

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