前回のエントリーで書いた「あさま山荘1972(上)」の続きであるこの下巻は、いかにしてあさま山荘事件に至ったのかについてが描かれていきます。
とはいっても上巻の印旛沼事件から時系列はすこし飛んで描かれています。
あさま山荘事件に至るまでに山岳ベース事件という「同志リンチ殺人」事件があったのですが、それは後から詳しく描かれていきます。
あさま山荘で逮捕されるまでを描いた後、この本は沖縄返還をめぐっての情勢の説明を経て、連合赤軍の結成、そして鍵となる「共産主義化論」の登場、そして「総括」での同志犠牲者が出るまでがこの本の内容。
この本は執筆時に後半の原稿が郵便事故により失われてしまい、後から著者の坂口氏が再度書き直した物が「続・あさま山荘1972」として発売されているので、壮絶な総括の内容はそちらに続きます。
冬の山を逃亡の為とは言え、徒歩で突破するという僕自身としてはとても信じられない逃避行劇ですが、彼らなりの「正義」という物が自分の内側にあったからこそここまでできたんだろうなあ、とは思います。
途中で逃げ出した人達もたくさんいるんですが「逃げ出さないと次は自分が殺される」というプレッシャーからの脱出って、かなりのエネルギーが必要だったでしょうね。
集団的狂気、という言葉は第二次世界大戦時のドイツ、そして我が国日本にも言える事ですが自分たちでは間違っていることに気づくことができない、という点が恐ろしくもあり、悲しくもあります。
山岳ベースから逃げ出した人々が、この現代から読んでいる自分にとっては「逃げ出せてよかったなあ」と心から思えるのだけど、彼らが属していた組織の中からは「日和見主義」「敗残者」として殺される対象となるわけですから。。
この「下巻」はあさま山荘での数日間の描写も生々しいですが、やはり最期に向かっていく途中の出来事の一つ一つが、僕自身の興味を満たしてくれる最良の著書でした。
相変わらず途中で出てくる思想関連の事については、理解しづらいです。
ただ、彼らも僕たちと同じ人間だというのがわかる気持ちの揺らぎがこの本からは読み取れるので、つい何度も読み返してしまうのです。
たぶん僕なりにこの坂口という人を理解したいのでしょう。
だけど読めば読むほど理解できないのは、「時代」というバックボーンが違うせい。
こればっかりはもうどうしようもない。
ただ・・・・
お腹の中に子供がいるのに同志によって殺害され
「お腹の中の子供は我々の物だから奪還すべき」
という結論にいたる集団的狂気。
そればかりは絶対に理解できそうにはありませんが。
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