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「特攻の町・知覧」佐藤 早苗

戦後生まれの者にとっては「大戦の話」は誰かから聞いたり、
書いた物を読んだりするしかない。
そんなに遠い昔でもなく、おじーちゃんが戦争で死んだとかそんな近さで
戦争があったはずなんだけども、今が平和(もしくは危機に無関心)すぎて、
自発的に情報を取りにいかないと何も知らないまま生きていく事が可能ってのが
ある意味スゴイなあと思います。
いや、自らに危険が及ぶことなく60年以上来てるってのがある意味スゴイなとも思いますが。

この本は鹿児島県知覧にあった特攻基地の周辺で起こった出来事を、
現代文で淡々と書いてあるので読みやすいです。
知覧での出来事は「俺は、君のためにこそ死ににいく」という映画にもなりました。
正直、あの映画はエピソードを端折りすぎてるしちょっと美化されすぎかなと思うけど・・
まあ、石原氏の思想満開って言っちゃえばそれで終わりなんだけども。

特攻を命じられた(あえてこう書く)人達は知覧に着くと最悪、翌日には
もう敵艦に向けて出撃とかあったそうです。
その来るべき出撃の日まで隊員のお世話をするのが、地元の女学生で編成された「なでしこ隊」。
そして、忘れてはならない冨屋食堂の鳥濱トメさん。
トメさんは特攻で死にに行く若者の世話を献身的に行った事で知られています。

しかし、戦後。知覧に進駐軍が来た時にその進駐軍の世話を命じられたことはあまり知られていないみたい。
トメさんは悩みながらもそれを全力で引き受け、進駐軍のアメリカ兵から「ママさん」と呼ばれ慕われたそうです。
もちろん、特攻で死んだ人達の「敵」にあたる人達なので、周辺から色々な罵詈雑言を浴びせられたとか。

でも戦争はいつだって「政府の都合」なのであって個人個人にはホントは関係ない事なんだわね。
このエピソードから、トメさんの計り知れない人間愛を感じるのは僕だけでしょうか。

あの偏った映画よりも、この本を読む方が個人的にはいいと思います。


Published in小説

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